2004/05/15

国民年金を払わせないのは誰だ

国民年金の未払い問題がマスコミをにぎわせています。早朝のニュースバラエティ番組では訳知り顔のコメンテーターが、「払わないやつには罰則をもって厳正に臨むべき」だとか「払わないのは犯罪だ」などと吠えていますが、さて、国民年金の対象者ってどういった人たちなの?この質問をしてみると、サラリーマンや公務員の人たちはほとんどこう答えます「商売をやってる自営業者」。答えは「ブー」、はずれです。答えは、「サラリーマン」、「失業者」、「店員さん」、「作業員」、「バツイチのパートさん」、「フリーター」「大学生」、そして「自営業者」とその他です。
「なにいサラリーマン、おかしいじゃないか、俺もサラリーマンだけどちゃんと厚生年金加入してるぞ」って必ず突っ込みがあると思いますが、そういった方の勤務先ははっきり言って「大手企業の正社員」か「親切な経営者のいる企業」なのです。いまや、普通の企業でも、勤務する従業員の多くが契約社員やアルバイト、パートなどで構成されていて、企業のコストダウンに大きく貢献しているのです。さて、ではこういった声も聞かれるでしょう、「でも、ちゃんと給料貰ってるんだから、払うのがあたりまえだろう」ってね。「ブー」またまた不正解です。さて、あなたの会社のロビーを掃除しているおばさん達はあなたの会社がアウトソーシングした清掃会社の人ですよね。彼女達の給料を知ってますか?また、定年を迎えて職場を去って行った「先輩」は今、あなたも利用している駅前の駐車場に勤めていますが、彼の給料をしってますか?あなの息子さんは大学を出て3年も経つのに、いまだにバイトで食べてるようですが、彼の年収を聞いたことがありますか?、お隣のお嬢さんは広告代理店にクリエーターとして勤務していますが、いくら貰ってるかしってますか?
実は、日本の「母子家庭の平均月収」は平成16年5月現在、14万円を切っています。フリーターの月収もほぼ同様です。中小企業の従業員さんは年齢に関わらず月収が20万行かない場合がほとんどです。かれらはもう何年も同じ会社に勤務していわけで、実質的に「サラリーマン」であって「自営業者」ではありませんよね。さらに「失業者」です、日本では「雇用保険の有る会社」を離職して、雇用保険の給付を受けている状態の人を基本的に「失業者」といっていますが、ここで言ってるのは「ほんとうの失業者」のことです。障害認定の出るほどではないが体を悪くして仕事が見つからない人や、介護する親を抱えてパートに出る事もなかなか出来ない独身の息子やそのたもろもろの事情で継続的な就業が不可能な人達のことです。いまや若者や高齢者層の就業形態はドラスティックに変容しつつある訳で、これらの原因の一つには、雇用側の企業による「人件費圧縮政策」に基づく「各種保険、年金の企業負担回避作戦」にあることは間違いの無い事実です。たとえば「コンビニのアルバイト」さんですが、大手でも、継続的な雇用は認めない政策をとっています。実は深夜のバイトなどはなかなか定着してもらうのが大変なんですが、本部からは「同じ人はなるべく継続させない事」といった指導を受けます。これは、雇用保険を含む各種保険の負担を回避するためです。当然年金などありません。
ファミレスやスーパーなどのお掃除やメンテナンスの人達は、自社社員がほとんどでしたが、業界団体などの主催のセミナーなどで、いろいろな手法が指導されているためか、一度子会社に移籍させて、「勤務年数に依存する退職金」をちゃらにしておき、今度は「子会社から全員形式的に解雇」して、年俸制による下請け外注化を推進しているため、彼らは大工さんなどの職人さんと同じに「自営業者」となっています、そうです、年収200万以下、実質的には給与所得者でありながら形式上「自営業者」の人々が大量に生まれているのが現状なのです。また雇用する側の提示する収入はよく考えられている金額です、ほぼ「親」や「息子」と同居していて、脛を齧ることを前提としていて、アジア的な家族でもたれ合って生活して行くしかない給与体系となっています。企業が決めるこの給与計画の中には健保を支払うことは前提となっていても、年金を払う余裕を認めてはいない、生かさず殺さずの金額なのです。
例えば、27才で離婚して17才の高校生を抱える40才母子家庭の場合、大手チェーン店のパートさんとしての月収が手取り15万円、スナックでのアルバイトの手取りが5万、合計20万ですが、支出は家賃が7万、学費などが3万、光熱費などが1万、食費や服飾費などが7万で国民健康保険を払うと、年金を払う余裕はありません。とりあえず免除申請をしても、永遠に後納できるわけではないので、年金受給は不可能です。こんな状況になっているのにどうやって年金制度を維持して行くのか、謎は深まるばかりです。